訳者注
以下、翻訳本文です。
プロダクトビルダー(訳注:プロダクトをつくる人たち)が自分のプロダクトに当てはめられるような、成功するプロダクトをつくる方程式はありません。これは、プロダクトが置かれている常に変化するコンテキストに、プロダクトづくりの詳細が大きく左右されるからです。あるプロダクトで成功した戦略が別のプロダクトではまったくあわないこともあります。企業向けのサービスを開発しようとするビルダーは、ソーシャルネットワークを立ち上げようとするビルダーとかなり違った行動が必要でしょう。プロダクトの置かれたコンテキストを「正しく」プロダクト戦略に組み込む方程式はありません。プロダクトのコンテキストには、文化、経済、物理的な世界の特性などが絡んでおり、深く研究することはできても完全に理解することはできないでしょう。
しかし、プロダクトをつくる技術には、どのようなコンテキストでも通用する根本的な構造があると私は考えています。そのようなフレームワークがプロダクト作りの「ハウツーガイド」になるとは思っていません。しかし、わかりやすい構造をうまく利用できれば、気が遠くなるような複雑さに取り組むビルダーの認知の幅を広げられます。これから説明するように、プロダクトづくりの構造は視覚的な図で表現できます。このような図を使うことで、常に頭のアクティブメモリーにおいておかなければならない複雑な状況を、頭の外に出してしまうことができます。解けなさそうな複雑な数学の問題を解くのにペンと紙が役立つのと同じように、このビジュアルボキャブラリーはプロダクトづくりの問題を解決するのに役立つでしょう。このフレームワークを使うことで、全体の方向性を見失うことなく1つの問題の要素に集中できるのです。
これらの図の目的を明快にする方法やこの記事全体における多くのアイデアは、建築家のクリストファー・アレグザンダーの作品「Notes on the Synthesis of Form(邦題:「形の合成に関するノート」)」からインスピレーションを得ています。
1. プロダクトトライアングル

まずプロダクトビルダーが置かれている環境について説明しましょう。プロダクトとはモノではなく、テクノロジー、利用する(かもしれない)人、そして資金を提供するビジネスとの間の進化する関係自体を指します。プロダクトを抽象的に表現すると上の図のようになります。これは私が「プロダクトトライアングル」と呼んでいる三角形です。プロダクトトライアングルはプロダクトビルダーが最終的に勝つか負けるかを決める競技場と言えます。
2. プロダクトフィット&ミスフィット
成功するプロダクトとは、技術的に実現可能で、ユーザーに愛され、ビジネスステークホルダーにとって満足のいく位置づけにあるものです。これらのポジティブな要素がすべて揃っているときに、そのプロダクトは置かれたコンテキストに「フィット」していると言えるでしょう。常に変化する予測不可能な世界において、このプロダクトフィットの状態を達成して維持することがプロダクトづくりの目標です。
また、プロダクトの置かれたコンテキストの中で、それぞれの頂点での「ミスフィット」も起きえます。例えば、開発やメンテナンスにコストがかかりすぎることは、テクノロジーがミスフィットしていると言えるでしょう。ユーザーベースとミスフィットしていると、ユーザー獲得が難しいか、そもそもユーザーが存在しないこともあるでしょう。ビジネスがミスフィットしているとステークホルダーの期待に応えることはできません。
プロダクトにとって「フィット」や「ミスフィット」している状態を絶対的に定義する方法はありません。自分のプロダクトがフィットしているのか、ミスフィットしているのかを判断するのはプロダクトビルダーです。
下記のプロダクトトライアングルの図では、各頂点でのフィットを「+」のアイコンで、ミスフィットを「ー」のアイコンで表しています。
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